子どもたちの成長を支える保育士という仕事。やりがいは大きいけれど、実際の収入面はどうなのか気になる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、保育士の平均年収や公務員保育士との違い、さらに公務員保育士になるための道のりまで詳しくお伝えします。
保育士の平均年収はいくら?
保育士の平均年収について、まずは全体像を見ていきましょう。
私立保育園で働く保育士の年収
こども家庭庁のデータによると、私立保育園に勤務する常勤保育士の給与月額は約34万8,119円です。この金額には一部賞与も含まれているため、年収に換算するとおよそ418万円程度になります。
私立保育園の場合、運営する法人によって待遇に差があります。大手の社会福祉法人が運営する園では福利厚生が充実していることもあれば、小規模な園では給与体系がシンプルなケースもあるでしょう。
公立保育園で働く公務員保育士の年収
一方、公立保育園で働く公務員保育士の平均年収は約439万円です。私立保育園と比べると、保育士の平均年収は公務員のほうがやや高めの水準となっています。
公務員保育士の給与は地方自治体の基準に基づいて決められており、年齢や勤続年数に応じて着実に昇給していく仕組みです。長く働けば働くほど、収入面でのメリットが大きくなる特徴があります。
公務員保育士と私立保育士の違いとは
保育士の平均年収を比較したところで、具体的にどんな違いがあるのか見ていきましょう。
給与体系の違い
公務員保育士の最大の特徴は、年功序列による安定した昇給制度です。20代のうちは私立保育園との差はそれほど大きくありませんが、30代、40代と年齢を重ねるごとに給与の差が広がっていきます。
データを見ると、30代で月給30万円台、40代では40万円台に近づき、50代になると最も高い給与水準に達します。主任保育士に昇進すれば給与月額は約56万円、施設長になれば約64万円まで上がることも珍しくありません。
福利厚生の充実度
公務員保育士は福利厚生の手厚さも魅力の一つです。育児休業を最長3年間取得できたり、ボーナスが年間で4.60ヶ月分支給されたりと、充実した待遇が用意されています。
また、土日祝日が基本的に休みで、残業時間も比較的少ないため、ワークライフバランスを保ちやすい環境といえるでしょう。退職金制度もしっかりしているので、老後の生活設計も立てやすくなっています。
働き方の違い
公務員保育士には定期的な異動があります。2〜4年のペースで別の公立保育園や、発達支援センター、乳児院といった児童福祉施設に配属されることもあるのです。
一つの園で長く子どもたちの成長を見守りたい方にとっては、この点がデメリットに感じられるかもしれません。一方で、さまざまな施設で経験を積めるという見方もできます。
公務員保育士になるには?
公務員保育士として働くためには、いくつかのステップを踏む必要があります。
保育士資格の取得
まず大前提として、保育士資格を持っていることが条件です。保育士養成校を卒業するか、保育士試験に合格することで資格を取得できます。
自治体によっては幼稚園教諭の免許も求められることがあるため、事前に募集要項を確認しておきましょう。
公務員試験への挑戦
保育士資格を取得したら、次は公務員試験に合格する必要があります。試験内容は筆記試験、面接、小論文などで、高卒程度の学力と保育士としての適性が問われます。
募集時期は自治体によって異なりますが、夏と秋に実施されることが一般的です。人員不足の際には不定期に募集が行われることもあるので、こまめに情報をチェックしておくとよいでしょう。
年齢制限は自治体ごとに違いますが、30歳を目安に設定されているケースが多くなっています。試験対策には1年程度の準備期間を見ておくと安心です。
競争率と難易度
公務員保育士の採用試験は競争が激しいのが実情です。東京都渋谷区では1.26倍、兵庫県宝塚市では2.71倍といった倍率が記録されています。
試験に合格しても、成績上位者から採用されていくため、場合によっては採用待ちの状態になることも。また、公立保育園の数は民営化の影響で減少傾向にあるため、正規職員の枠は狭き門となっているのが現状です。
保育士のキャリアアップと収入
保育士として働き続ける中で、どのように収入を増やしていけるのでしょうか。
役職による収入の変化
公務員保育士の場合、一般保育士から主任保育士に昇進すると、給与月額が約20万円も増加します。さらに施設長まで昇進すれば、より高い年収が期待できるでしょう。
主任保育士への昇進は平均勤続年数から見ると40代以降になることが多いようです。長期的なキャリア形成を考えることが、収入アップの鍵となります。
地域による収入差
保育士の平均年収は、勤務する地域によっても変わってきます。都市部のほうが給与水準は高く、東京都渋谷区の初任給は約20万8,920円〜26万9,640円、兵庫県宝塚市で21万3,325円、福岡県筑前町で18万1,800円程度と、地域差がはっきりと表れています。
高収入を目指すなら、どの地域で働くかも重要な選択肢の一つになるでしょう。
専門性を活かした働き方
保育士としての専門性を活かして、講演会やコンサルティングといった活動を行う道もあります。イケメンカリスマ保育士として知られるてぃ先生のように、YouTubeや書籍出版、テレビ出演など、多方面で活躍する保育士も増えています。
保育現場で培った経験や知識を社会に発信することで、保育士という仕事の価値を高めることにもつながるのです。
保育士の将来性と課題
保育士を取り巻く環境は、今後どのように変化していくのでしょうか。
公立保育園の民営化
現在、公立保育園は民営化が進んでいます。公費削減の影響で会計年度任用職員の採用が増えており、正規職員として採用されるハードルは高くなっているのが実情です。
ただし、公務員保育士の採用が完全になくなることは考えにくいでしょう。自治体によって方針は異なるため、希望する地域の動向を注視することが大切です。
処遇改善の取り組み
一方で、国の処遇改善施策により、私立保育園の待遇も向上傾向にあります。保育士不足が社会問題となる中、保育士の労働環境や給与水準を改善する動きは今後も続いていくと予想されます。
公立と私立、それぞれにメリットとデメリットがあるため、自分の価値観やライフスタイルに合った働き方を選ぶことが重要です。
まとめ
保育士の平均年収は、私立保育園で約418万円、公務員保育士で約439万円となっています。公務員保育士は年功序列による安定した昇給や充実した福利厚生が魅力ですが、定期的な異動があることや採用の競争率が高いことがデメリットといえるでしょう。
公務員保育士になるには保育士資格と公務員試験の合格が必要で、準備には時間がかかります。しかし長期的に見れば、安定した収入と働きやすい環境を手に入れられる可能性が高いのです。
これから保育士を目指す方も、すでに保育士として働いている方も、それぞれの選択肢を比較検討しながら、自分らしいキャリアを築いていってくださいね。
