美容師として独立を考える時、誰もが最初に気になるのは「どれくらいの収入が期待できるのか」「どのくらいの費用がかかるのか」という点ではないでしょうか。経験や技術を積み上げた後の独立は多くの美容師の夢ですが、成功するためには技術力だけでなく、経営のノウハウも必要です。この記事では、美容師の独立後の収入(年収)モデル、必要な初期投資や安定した経営を実現するためのポイントを、3つの営業スタイル別に解説します。
美容師で独立した場合の年収は？
美容室を独立経営するスタイリストの年収は、一般的に売上の約20%程度が目安とされています。売上から以下のような経費が差し引かれた後の金額が、オーナーの手元に残る利益となります。
- 人件費：約35%
- 賃料・水道光熱費：約10%
- 材料費・備品費：約10%
- その他経費：約25%
ただし、独立後の実際の収入は営業スタイルによって大きく変わってきます。
平均年収を確保するためには？
美容師の平均年収を確保するために必要な売上目標は、以下の3つの営業形態によって異なります。
それぞれの形態によって必要な売上目標や収益性が変わるため、自分のキャリアプランに合った選択をすることが重要です。
１．従業員を雇用
美容室オーナーとして従業員を雇用する場合、売上の約20%が年収の目安とされています。美容師の平均月収は27万8,700円ですから、これを上回るためには、その5倍となる月売上139万3,500円以上を達成する必要があります。週5日勤務（月20日稼働）と仮定すると、1日あたり約7万円の売上が必須です。ただし、従業員と共同でお客様対応ができるため、1日の売上を伸ばしやすいという利点があります。自分一人では目標金額に届かなくても、スタッフを雇用することで独立・開業が実現可能なケースもあるでしょう。注意点として、たとえ売上目標を達成できない月があったとしても、雇用したスタッフの給与は必ず保証しなければならないという責任が生じます。この点はビジネスオーナーとして常に意識しておく必要があります。
２．オーナー1人で経営
美容室をオーナー1人で経営する場合、人件費という大きなコスト負担がないため、売上の約55%を自身の年収として確保できます。美容師の平均月収である27万8,700円を目指すなら、月間売上50万6,728円が必要。週5日・月20日の稼働と仮定すると、1日あたり約2万5,400円の売上があれば平均収入を確保できる計算です。収益性を高めるためには、基本のカットに加えてカラーやパーマなどの高単価メニューを提供したり、サロン内での会話を通じてヘアケア製品などの物販販売を増やしたりする工夫が効果的。
３．シェアサロンを利用
シェアサロンというスタイルを選ぶ美容師や理容師は、売上の65〜80%程度を自身の収入として確保できます。個人店舗の運営と比べると、固定の賃料や水道光熱費などの大きな負担がなく、必要な時だけ場所を利用する柔軟性があります。美容師の平均月収27万8,700円を目指す場合、月間で約35万円〜43万円の売上が必要。月20日の稼働であれば、1日あたり約1万7,500円〜2万1,500円の売上があれば達成可能な計算となります。ただし、シェアサロンの利用料体系によって手元に残る収入割合は変動します。また、固定店舗がないため通りすがりの顧客を見込めないという難点も。そのため、リピーターとなる指名客をしっかり確保するか、SNSなどを活用した積極的な集客が成功の鍵となるでしょう。
美容室オーナーとして独立する際の初期投資について
美容室を独立開業する際には、初期費用として1,000〜2,000万円程度の資金が必要になるのが一般的です。
- 物件費用
- 内装工事
- 機器・備品費用
- 材料費
- 広告宣伝費
- 運転資金
これらの費用は開業前に詳細に見積もっておくことが重要です。事業計画を立てる際には、初期投資の回収期間として1〜4年程度を見込んでおくと良いでしょう。特に融資を受けて開業する場合は、月々の返済額を考慮した収支シミュレーションを事前に行い、無理のない事業運営ができるか確認しておくことが成功への近道となります。
最後に
美容師として独立することは、自分のこだわりやセンスを存分に発揮できる素晴らしい選択肢です。ただし、経営者としての視点も同時に持ち合わせることが成功への近道となります。技術を磨くことはもちろん、集客方法や財務管理の知識を身につけ、自分に合った経営スタイルを選ぶことで、理想のサロンづくりと安定した収入の両立が可能になるでしょう。独立という大きな一歩を踏み出す前に、この記事が皆さんのキャリアプランニングの一助となれば幸いです。