空の上で飛行機を操縦するパイロットという職業に、多くの人が憧れを抱いています。特に日本の二大航空会社であるANA（全日空）とJAL（日本航空）のパイロットは、高い専門性と責任を伴う職業として知られていますね。
今回は、ANAとJALのパイロットの年収について詳しく解説し、どちらが高いのか、そして個人差が生まれる理由についても探っていきます。
ANAパイロットの年収実態
まず、ANAパイロットの年収について見ていきましょう。
機長と副操縦士の年収差
ANAパイロットの年収は、役職によって大きく異なります。機長の平均推定年収は約2,600万円、副操縦士の推定平均年収は約1,350万円とされています。これは厚生労働省の調査データや業界の実態を基に算出された数値です。
機長と副操縦士の年収に約1,250万円もの差があるのは、責任の重さと経験年数の違いが大きく影響しているからです。機長は最終的な判断権を持ち、何百人もの乗客の命を預かる重要な役割を担っています。
年齢による年収の変化
パイロットの年収は年齢とともに上昇していく傾向があります。20代前半では約300万円程度からスタートし、30代後半で約1,600万円、50代後半では約2,600万円にまで達します。
これは一般的なサラリーマンと比較すると、かなり高い水準といえるでしょう。ただし、この高い年収には相応の理由があります。
JALパイロットの年収実態
次に、JALのパイロットの年収について詳しく見ていきます。
JALグループ全体のパイロット年収
JALグループのパイロット（3,196名）の平均年収は約1,879万円です。これは2023年3月期の有価証券報告書に記載されている公式データに基づいています。
JAL機長の平均推定年収は約2,600万円、副操縦士の推定平均年収は約1,450万円と推測されます。これらの数字を見ると、ANAとほぼ同水準であることがわかります。
経営破綻後の給与変化
JALは2010年に経営破綻を経験し、その後大幅な給与カットが行われました。2005年には運航乗務員の平均年間給与が約2,000万円前後ありましたが、経営再建の過程で給与水準が下がりました。
しかし、近年は業績回復に伴い、給与水準も徐々に改善されてきています。現在では経営破綻前の水準に近づきつつあります。
ANAとJALのパイロット年収比較
両社のパイロット年収を直接比較してみましょう。
基本給与の比較
機長レベルでは、ANAとJALともに約2,600万円程度の年収となっており、大きな差はありません。副操縦士レベルでは、JALの方が約100万円程度高い傾向にあります。
これは各社の給与体系や手当制度の違いによるものです。どちらも業界トップクラスの待遇を提供していることは間違いありません。
福利厚生と手当の違い
年収の数字だけでは見えない部分として、福利厚生や各種手当があります。両社ともに充実した福利厚生制度を設けており、実質的な待遇に大きな差はないといえるでしょう。
国際線手当、乗務手当、宿泊手当など、パイロット特有の手当も両社で同程度支給されています。
パイロット年収に個人差が生まれる理由
同じ航空会社のパイロットでも、年収に個人差が生まれる理由について説明します。
乗務時間と路線による違い
パイロットの年収は、乗務時間に大きく左右されます。月の乗務時間が多いパイロットほど、乗務手当が多く支給されるためです。
また、国際線を担当するパイロットは、国内線のみのパイロットと比較して年収が高くなる傾向があります。これは国際線手当や宿泊手当が追加で支給されるためです。
経験年数と役職の影響
副操縦士から機長に昇格するタイミングは個人によって異なります。早期に機長に昇格できれば、それだけ高い年収を得られる期間が長くなります。
また、機長の中でも訓練教官や路線管理職などの役職に就くことで、さらに年収アップが期待できます。
健康状態と勤務継続
パイロットは定期的に厳しい身体検査を受ける必要があります。健康状態によっては乗務できなくなるリスクがあり、これが年収に直接影響します。
長期間安定して乗務を続けられるかどうかが、生涯年収に大きく関わってくるのです。
パイロットの高年収の背景
なぜパイロットの年収がこれほど高いのでしょうか。
専門性と責任の重さ
パイロットになるためには、国家資格の取得が必要で、航空会社が新卒社員をパイロットまで育成するには5,000万円から1億円程度の費用がかかります。
また、何百人もの乗客の命を預かる重大な責任があり、常に安全第一の判断が求められます。この専門性と責任の重さが高年収の理由です。
国際的な人材獲得競争
世界的にパイロット不足が進行しており、優秀なパイロットを確保するための競争が激化しています。日本のパイロットが海外の航空会社に高額年収で引き抜かれるケースも実際に起きています。
このような状況下では、競争力のある給与水準を維持することが不可欠なのです。
今後のパイロット年収は
パイロットの年収は今後どのように変化していくのでしょうか。
パイロット不足と給与水準
世界的なパイロット不足は今後も続くと予想されており、特に団塊世代のパイロットが大量退職を迎える「2030年問題」が懸念されています。
このような状況では、パイロットの給与水準は維持または上昇する可能性が高いでしょう。両社ともに優秀な人材を確保するため、魅力的な待遇を提供し続ける必要があります。
航空業界の成長と給与への影響
コロナ禍からの回復に伴い、特に国際線の需要が回復傾向にあります。これにより、パイロットの乗務時間も増加し、乗務手当などの変動給部分が増える可能性があります。
オリンピックや万博などの大型イベントも控えており、航空業界全体の成長が期待されています。
まとめ
ANAとJALのパイロット年収を比較すると、機長レベルでは両社ともに約2,600万円程度で大きな差はありません。副操縦士レベルではJALの方がやや高い傾向にありますが、その差は限定的です。
個人差が生まれる理由としては、乗務時間、担当路線、経験年数、役職、健康状態などが挙げられます。どちらの航空会社を選んでも、パイロットとしての専門性を高め、安全運航に貢献することで、十分な年収を得ることができるでしょう。
パイロットの高年収は、その専門性と責任の重さに見合った正当な対価といえます。今後も航空業界の発展とともに、パイロットの待遇は維持・向上していくことが期待されます。